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心と心理がはたらくことによって人と人間を区分することができる。人と人間には心があり、心理がある。このように心と心理がともに存在することから大部分の人々は人と人間は同一なものと考えている。しかし心は人と人間とに同一に存在するが、心と心理がはたらくという面では人と人間とが異なっている。
人は個別であり、独立的に存在する。個別の独立的な人と人が相互の関係をもつようになると人間というのである。Aという人とBという人が相互の関係をもつとき、Aという人間とBという人間となる。それでAという人が、人である場合には人の心と心理がはたらき、Aという人がBという人とお互いに心理がはたらく場合には人間の心と心理がはたらくのである。
心は思いであり、考えである。外部の情報を認識して自覚し、記憶された情報と比較し、外部に表現する。このとき認識心理、記憶心理、表現心理がはたらく対象が人でなければただ単に自分一人だけの人として存在する。このように心が認識心理、記憶心理、表現心理としてはたらくときほかの人が関係ないのであれば人としての心と心理がはたらき、機能するのである。
人間である場合にも人のように心によって認識し、記憶し、表現する。このとき認識心理、記憶心理、表現心理がほかの人とともにはたらけば人間として存在するのである。大部分の人たちは誰かを思い出せば切なく、胸が痛いといいながら人らしいというが、実のところ人間らしいと言った表現のほうが正しい。
一人でいるときであっても無条件「人」とは言えない。一人でいながらほかの人を思うのであれば人ではなく、人間である。すなわち認識する対象、思い出される対象、表現される対象がほかの人であるのかないのかによって人と人間に区分される。
辞書を開いてみると、人は「二足で立って歩き、言語と道具を使い、文化を享有(生まれながらに有する)し、考えと笑いをもった動物」と定義しており、人間は"直立歩行をし、思考と言語能力を基にして文明と社会を成して生きる高等動物"というふうに定義されている。用語で定義するのを見ると、似通った言葉に認識されやすい。
人とは人間の各々にたいする独立的な概念として各個人別の主体のことを言う。そしてこのような人と人が関係をもつとき人とは言わず、人間と言う。つまり人は一人を意味し、人間は人の複数を意味している。したがって個別の主体である人が集まってお互いに関係をもつようになるとき人間というのである。
私たちが普遍的に使っている言葉のなかで、人間社会というふうに表現はしても、人社会とはあまり表現はしない。客体的な存在、独立的な存在としての概念をもっているのが人であり、人間は人と人が互いに疎通し合う関係として相互関係が形成されるとき人と人を人間というのである。
人と人間の相違点をいうとき、人は漢字で「人」、人間は「人」と「間」と書かれる。各自独立して存在するときは人と表現し、人と人との間の関係を人間関係というのであるが、人間という言葉そのものが人間関係を意味している。人間が特定の目的や状況を形成したり、認識するために人間関係と表現するのである。それで人間は人と人の関係性をもっている。
結局は自分だけでなく、両親、家族、友だち、知人、先生、その他すべてのほかの人たちとの関係は人と人が関連する関係として人間である。両親との関係を観察してみると、父親も母親も私もみな人間である。このとき母親は一人の人として存在するが、ともに存在するときは人間である。それで私を基準としてみるとき母親としての役割をするが、母親もまた一人の人である。父親も私も同じように一人の人として存在する。このように母親という一人の人、父親という一人の人、私という一人の人がともに連結して人間関係を形成すれば家族関係という。そしてこの家族関係において母親と父親の人間関係を夫婦関係といい、両親と私との関係を親子関係という。このようにすべての人間は人と人が連結しながら特定な状況、環境、目的によって関係を形成している。
もし、無人島や山奥に一人で生きているのであれば、これは人として生きているのであって、人間として生きているのではない。人間は二人以上の人が関係をもっている。
このように私たちがよく使う言葉のなかでも人間の心と心理が関連していることが多いのにも拘わらず、このことを正確に区分できずにいる。人と人間は誰でも体と心で構成され、ともにはたらき合っている。それで人であれ、人間であれ、誰でも尊重しなければならず、また尊重される権利がある。すべてがみな同じように体と心がはたらき合っているからである。
体は見えるのだが、心は見えるわけではない。しかし見えないからといって存在しないわけではない。自分だけではなく、ほかの全ての人たちも同じである。私も人であると同時に人間であり、ほかのすべての人たちもまったく同じなのだ。
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